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ストラトキャスタータイプ
所有するストラトタイプのギターを紹介します。昔はあまり興味がなかったはずが,やはり操作性と拡張性で現在はソリッド系の主力となっています。

ストラトタイプ1 ビンテージモデファイ系
ドライブサウンドを使う際のライブの主力です
Navigator custom ST type 1997
Navigator custom ST カスタムストラト1号機。1996年8月オーダー,翌1997年2月完成と,6ヶ月もかかったギター。巷ではESPの評判は非常によろしくないが,私は中学時の友人がここを褒め称えていた影響もあり('80年頃か)また東京旅行で立ち寄ったここに,NYでES-175を購入したときの店員さんと再会して思わず乗せられてしまい,初めてのオーダーメイドをしてしまったという次第だ。しかし,納期3ヶ月と言って倍もかかってはいけない。それから,3WAYのPUセレクターが可能と言ったのに,後から電話で「5WAYじゃないと無理ですぅ」などと泣きついてきてはいけない。

 価格は,この際ハッキリ記録しておくが,送料込みハードケース付きで25万円だった。

※手元にあるギターマガジン1996年8月号(本器のオーダー時期)を見ると,

1 ESP広告で「オーダーサンプル」として「SE-480DT」なる48万円のギターが掲載されている。
2 Gibson Les Paul Standard の定価が22.8万円。
3 「Kids Guitar」のレイボーン風レリックモデルが20万円。

等の情報を得られた。ストラトタイプとしては決して安くはないが,ESPにしては安くしてくれたのではないか?という推測もある。
 
 それはともかく,スペックは

ボディ:アルダー
ネック:メイプルボルトオン
指板:エボニー
ペグ:ビンテージタイプ
PU:ダンカン・セスラバー(フロント)・ダンカンシングル(ミドル及びリア)
コントロール:2vol1tone(フロントのみtoneは効く)
PUセレクター:5way(タップなし)
ブリッジ:ハードテイル

 コンセプトは「とにかくシンプルでフロントハムのストラトタイプ」。

 ハードテイルにしたのは,単純に「アームは使わないから」。フェンダーのロバート・クレイモデルやブレードの山岸潤史モデルからの影響もあったように思う(当時どちらも弾いたことはなかったが)。何となく男気があるような気がして。今となってはストラトのトレモロシステムが「ストラトらしさ」の一要因であることを知っているが,当時は「使わぬものは不要」という発想だった。その他やはりネックは太め,オールラッカー,ブラウンバーストのリムを細めに,といったオーダーをした。

 仕上がりは良好。最初は鳴らない印象だったが,次第に「育ってきた」ようだ。ハードテイルの音はやはりノーマルのストラトとは異なり,カッティングなどではどこかテレキャスぽいジャキジャキ感を有している。ちなみにロゴは「ESP」でなく,「Navigator」にしてもらった。「フロントで太いハムバッキングサウンド」「ミドル・リアでカッティング」という使い分けが音量調整含めワンタッチで行え,セッションでは重宝する。

 PU配置が「HSS」となっているストラトタイプは滅多にないと思うが,私的には大変使いやすい。同じようなことを考える人はいるもので,私の知る限り矢堀孝一,菊田俊介,天野丘,岩見和彦,ポール=ボーレンバックの各氏が同じようなPUレイアウトのギターを所有しているか,あるいは過去に所有していたはずである(知らない人は検索してみてください)。やはり皆ジャズ・ブルース系の方々である。(注:ただし,「HSS」は日本での慣行に従いフロントから並べた表現。アメリカで「HSS」はリアのみハムであるストラトを指すようだ)

 シンプルさ故に,弾き手のテクニックが如実に反映されるギター。ごまかしが利きません(これもテレキャスぽい特性)。ダンカンのPUもビンテージな感じで,クリーン音がいい仕事していると思う。しかし,こんなシンプルなオーダーをESPにする人間も少ないだろう。
※「esp オーダーギター」で画像検索すると,ド派手なカラーに奇抜なシェイプ,フロイドローズにボディ虎目バリバリ,みたいなのが次々に出てきて辟易させられる。

(修理・パーツ交換履歴)
○2003年頃? トーンポット劣化のためDIYで交換。EP086 500k 01。
○2009年2月,地元のtokiwa-kaiさんでフレットの摺り合わせを施してもらいました。絶賛されたのでちょっとこのギターを見直しました。

○その後KTSのチタンサドルを試しに装着,よりアタックの効いたバランスのよい音に変化。

○2016年12月,シングルPUの1弦側高さ調節ゴムが2つとも劣化したため,交換。

○2018年2月,ダンカンストラトから外したGOTOH製S102(スチール製)にサドルを交換。

○2021年7月,サドルをRaw Vintage製に換装。結局ストラトタイプには基本ビンテージタイプのサドルにしようと考えたため。

○2023年7月,フロントのポット2つに接点復活剤注入。ガリが生じたため。ついでにポットについて記録しておく。
・フロントボリューム:CTS FN8446 4788(500k A)
・ミドル・リアボリューム:CTS FN8449 4788(250k A)
・フロントトーン:EP086 500k 01
 フロントトーンは昔交換したESP製。他の2つはオリジナルだが,調べてみるとESPがCTSに作らせたモノ,との情報あり。真偽は不明。「8446」とか「8449」はセオリー通りだと1984年製ということになるようだが,実際はそんなことはあるまい。という指摘が海外サイトにあった。同感。

 結果,やはりトーンポットの調子が思わしくないのでCTS B500-Sに交換。ここで初めて気づいたが,本器制作時のオリジナルはCTSのミリ規格ポットであった。今回交換したモノはインチ規格だが半ば強引に装着(2003年頃も確かそうした)。
 ついでにコンデンサをSCUD CR-022VQというデカイやつに交換。音の変化は弦交換により不明。まあ,精神安定剤です。
Seymour Duncan DS-100R 62 Traditional mod 1992

 2011年6月中古で購入。セイモアダンカンという有名ピックアップブランドから出ていたスタンダードなビンテージコピー系のモデル(実質ESPによるプロデュース)。90年代には盛んに雑誌広告が出ていたが,ギター本体のブランドとしては現存せず。2002年度版のカタログを持っているので少なくともその時期までは存在したはず。本器はネックポケットに10.28.92というスタンプがあるので1992年製と断定。実際に手にしてみるとどうも「ストラトらしさ」のないギターだった。スペック的にはアルダーボディ,ダンカンシングルSSL-1が3発,ただし指板のRはきつくない,と私的には申し分なかったのだが,ストラトのいわゆる「ガラスのような」感触がなく,むしろシングルにしてはやけに野太いサウンドだったのである。ボディの鳴りもさほどなし。元々定価10万円でむちゃくちゃ高級というわけでもない。こうなると,モデファイ心がムクムクと起きる。

 で,画像のようになりました。「ハイラム・ブロック」モデルを意識したのは明らかでしょう。ただし,PUは唯一残ったセンターのSSL-1に,ダンカンSH-2n「JAZZ」(フロント)とSH-4「JB」(リア)の王道コンビネーション。ハーフトーン時にはハムが自動タップされる,という仕様。さらにフレットはステンレスに打ち替え。以上は長年お世話になっているM君にすべてモデファイしてもらいました(2013年のこと)。

 ストラト原理主義者は眉をひそめるかもわからぬが,セッション時に非常に有効なギターである。ステンレスフレットは良くも悪しくも影響あり。よく言えばブライトな音だが,キンキンした感じは確かにある。しかし,いくら弾いても簡単には減らないというのは精神衛生上非常によろしいものである。

(追記)修理・パーツ交換履歴
○2015年8月,ダンカンのハムは 0.047uF のコンデンサが基準になっているとの情報から,オレンジドロップ 0.047uF 600V 715Pに交換。 少しまろやかな音になったか(微妙)?

○2017年1月,フロントピックアップをダンカンSH-1nに交換。SH-2nも悪くなかったのだが,ステンレスフレットの影響か,耳に痛い不要なハイがどうも気になったので,もう少し高音控えめなピックアップにしたかった。SH-1nはド定番過ぎる気もしたが,狙い通り明らかに耳障りでない柔らかい音に変わったのを実感。
 教訓=ステンレスフレットにはトレブルの強いピックアップは合わない。
 なお,私のSH-1nは単芯モデルであるため,リアもろともオートマチックタップは廃した。 

○2017年1月,ピックアップ交換と同時期にブリッジサドルをゴトーS102に交換。単にオリジナルのプレスサドルが腐食してルックス的なアンバランスさを感じたからだが,「HSH ストラト」で画像検索すると,どちらかといえばプレスサドルよりブロックサドルを付けている個体が多いことに気づく。皆さんHSH化する時点でいわゆる「ストラトらしさ」は求めないわけで,そうするとサスティンなどの理由でブロックサドルが有利になるのか,等と推理し,そう高価でもないのでとりあえずゴトー製スチールブロックサドルにしてみたわけ。

 結果,プレスサドルはアタックを強調するが,ブロックサドルはアタックを押さえその分サスティンを稼ぐように感じた。イメージとしては「カキン」が「グォーン」に変わった感じか。それでもステンレスフレットの影響は大で,やはりギラギラした感じは残っている。まあ,こういうハイパーなストラト(笑)もあってよい。
 交換後,そう言えばハイラム・ブロックさんはどうだったのかとチェックすると,彼の改造ストラトはやはりブロックタイプのサドルを装着していた。ただし映像などをよく観察すると色合いからブラス製のようにも見える。

○2018年2月,サドルをGOTOHのS12-C(ブラス製)に交換。スチール製よりアタックを押さえた上品な感じに変化。本来は11.2mmか11.3mm幅のサドルがよいのだが,探すとブラスサドル自体種類が限られる模様。S12-Cは本来テレキャス6wayブリッジ用のパーツで幅10.8mm,なおかつシンクロブリッジにはやや長すぎるのだが,まあ許容範囲とする。

○2018年7月,やはりオクターブチューニングに難ありで,サドルをオリジナルに戻す。

○2019年7月,サドルをグラフテック社のものに交換。やはり耳に痛い高域が気になるため,少しでも金属的な部分を緩和しようとの目論み。

○2019年8月,衝動的にピックアップをSeymour Duncan APH-1n,APH-1bに交換。金属的な高域カットのため,高域を抑え気味,低出力のハムバッカーということで選択。これまでダンカンのハムはSHシリーズしか興味がなかったが,カタログを見るとSH-1より高域をまろやかにしている旨の記述があったので。ネットでの評判は全く一貫性がなく,若干の不安もあったが,結果的には成功。

○2021年7月,サドルをRaw Vintage製に換装。試行錯誤の結果,ストラトタイプには基本ビンテージタイプのサドルにしようと考えたため。

○2021年9月,リアPUをDuncan SH-5に換装。少しだけリアをパワーアップさせるため。結果として「フロント=APH-1n,リア=SH-5」の組み合わせになったわけだが,これは2008年頃ESPカタログ掲載,高崎晃氏のランダムスターにおけるPU組み合わせに近いことを後に発見(高崎氏のリアは正確にはTB-5)。

○2022年4月,フロントPUをダンカンSH-1n(4芯)に交換。APH-1のシングルっぽさからより単音の説得力=ハムバッキングらしさを求めたため。2017年にSH-1の単芯を付けていたが,今回はあえてタップのための4芯にこだわってみた。

○2022年5月,リアPUをダンカンSH-6に交換。パワーアップのため。実はタカナカ氏のHSHストラトがフロントSH-1n,リアSH-6であるのに取りあえず倣ってみたのである。リアはビンテージ寄りの範囲内で最大限のパワー感,良いのではないでしょうか。しばらくこの仕様で弾き込んでみる。

ストラトタイプ2 2ハム
オリジナルモデル2号機と,Bill Lawrenceのレアモデル。個人的に好きな2ハムタイプ・ストラトシェイプのモデル。
Custom STtype "Live Life" 2000
オリジナルスルーネックストラト オリジナルスルーネックストラト

 カスタムストラト2号機。2000年8月入手。同僚の知人でギタービルダー修行中のM君を紹介してもらい,彼の卒業制作(?)として安く作ってくれるというのでオーダーしたもの。全くのハンドメイドで,色々注文を付けつつようやく完成にこぎ着けたモデルである。  
 最初の主なスペックは以下の通り(その後幾多の変遷あり)。

ボディ:マホガニー
ネック:5ピーススルーネック・メイプル+ウォルナット
指板:ローズウッド
ペグ:シュパーゼル
PU:Dimarzio Airclassic×2
コントロール:2vol・1tone
PUセレクター:5way(2種のタップ含む)
ブリッジ:ハードテイル

 その他ネックは太め(ES-335から型どり),オールラッカー,オールブラックパーツ,ベッコウピックガードなどこだわりの逸品である(笑)。外観はヘッドの「ハカランダ」の付き板も相まって,非常に重厚な印象。「なんか,アレンビックみたいやね」と言われたことがある。
 
 最初は1号機のNavigatorのようにH-S-SのPUレイアウトにしようとしていたが,1999年頃観た渡辺香津美先生のライブで使用されたコンバットストラトタイプが2ハムだったので,それに追従した記憶あり。
 
 サウンドは丸く甘い感じ。いわゆる普通のストラトの音ではない。PUセレクターの特色を生かすためには,ボリュームフルテンにして,エフェクターをかまし,バッキング時にタップするという使用法が正しい。
 
(追記)
○サドルを一時グラフテックに交換していたが,結局オリジナル(おそらくブラス製)に戻した経緯あり。

○セッションなどでかなり酷使したため,傷も増えました。酔っぱらって倒してしまったときオリジナルのシュパーゼルロックタイプが一つダメになったため,ウィルキンソンのビンテージタイプに自力で換装(2010年4月)。探すと黒のパーツというのは結構少ないものである。こちらの方が私的にはタイトな音が出るように思う。

○2013年2月,M君にリフレットを依頼。スティーブ・カーン御用達というジム・ダンロップ6140,ミディアムジャンボ。リフレット自体初めての経験だったが,期待通り,実に美しい仕上がり。フレットも高すぎず低すぎず,良い感じ。

○2021年9月,リアPUをDimarzio Tone Zoneに換装。リアをパワーアップさせるため。フロントとリアの組み合わせはCrewsのAb'sというギターの仕様を参考にした。本器のピックアップ交換は製作後20年あまりにしてほぼ初めて。

○2021年11月,リアPUに続きフロントPUをDimarzio Air nortonに換装。リアのTone zoneとベストマッチ,との情報から。Air Classicと大差ないのではないかと思ったが,ややパワーアップしたせいかピッキングの反応が早く感じられ,芯もある感じで弾きやすい。
 この時ついでにコンデンサをMallory社製.022uf 630Vというのに交換した。音の変化は特になし 笑。
Bill Lawrence BS1E100 BWL 年代不明

 2019年4月購入。かつて持っていた2ハムのBL1が懐かしくなり,探していた折偶然発見したモノ。明らかにBL1の亜種と思われるが,ネット,雑誌での情報ほぼ皆無。どこかのリペアショップのブログで同型と思われる個体の画像を発見したのみであった。ネックポケットに記されていた鉛筆書きのメモをとりあえずのモデル名として掲げておく。前オーナーによれば

 BS:ボディエッジがスクエア
 E:エボニー指板
 100:定価10万円
 BWL:ブラックパーツ,ウォルナット

を意味している,とのことだった。ビルローレンスのストラトモデルについては大体把握しているつもりだったが本器は初見。小振りのディンキーサイズボディという点から,初期の製作ではないと思うが。

 送料節約のためネック・ボディをバラされて送られてきた(笑)モノを組み立てたところ,自分的にはネックポケットが浅く,サドル角度が急傾斜過ぎる気がした。2020年3月,ネックポケットを削り深くすることを決意するも地元では断られてしまう。仕方なくネットでこのようなリペアをしているところを探し,兵庫県のH/F STUDIOさんに送付,施工してもらった。とても良心的な対応と料金であった。ちなみにこの時サドルの傾斜はアーミングの余裕を確保するためで特段の異常ではない旨を教えてもらった。

 ネックシェイプは伝統のトライアングル〜ラウンド移行シェイプ,フレットもおそらくジムダンロップ6100ジャンボである。慣れると非常に弾きやすい。何よりエボニー指板のソリッドギターなど2000年代以降そうお目にかかるモノではない。重量約3.7kg。

 サウンドはウォルナットボディの影響はそれほど感じず,とにかくピックアップL-500のキャラでむしろ派手目の傾向。ボディが小さいほどサウンドにおけるピックアップの比重が大きくなる気がする。

 総じて,端正な顔つきのくせに中身は思い切りロック野郎なギターである。



ストラトタイプ3 3シングル
フェンダーの「ビンスト」,Bladeの山岸潤史モデル。オーソドックスな3シングルのストラト。
Fender USA  American Vintage 62 Stratocaster 3TS 1991
Fender USA American Vintage 62 Stratocaster 3TS 1991  2009年9月購入。これも定番の「ビンテージストラトキャスター」,一般に「ビンスト」とか「アメビン」と称される。確か1982年頃にビンテージブームに対応すべくフェンダーUSAがリイシューしたシリーズ。私の場合,ノーマルなストラトをライブで使うことが無いのは明白なので,とにかく安い中古を探した結果,ヘッド裏塗装はがれ有り,というものを7万円くらいで入手できた。

 楽器としての状態に問題はないが,その枯れたサウンド,ラウンドのきつい指板,細く低いフレットなど,決して弾きやすいギターではなく,弾き手の力量がそのままアウトプットされる,という印象。左手をしっかり押さえ,丁寧にピッキングしないときちんとした音が出ない。

 3ピースアルダーボディに,細ネック,凝った作りではないが「これがストラトです」というような素の力をもったモデルと見た。ストラトの標準原器。マニアには色々と言い分もあるのでしょうが・・・・。重量は約3.7kg,ストラトとしては軽い方ではないと思う。ネックを外すと「D.CHAVEZ」の人名が。

 きわめてフツーのストラトではあるが,ビンテージへの好奇心もそこそこ満たしてくれる一本。ともかくも本家のこのモデルを持ったことで長年のストラトタイプに対する執着も一段落,といったところ。・・・といいつつ後年まだまだ買い続けていくのであった・・・。

(追記)修理・パーツ交換履歴
○2015年,サドルをKTS社製チタンサドルへ試験的に交換。

○2021年7月,サドルをRaw Vintage製に換装。結局ストラトタイプには基本ビンテージタイプのサドルにしようと考えたため。
Blade R-158 JY 山岸潤史モデル 1994?
BLADE R-158JY  本モデルは昔楽器屋で入手したチューン/ブレードのカタログに掲載されており,存在は知っていたが中古市場やネット上の情報は皆無に等しく,自分の中では幻のギターと位置づけられていた。このたび,「R-158 JY」という正式な品番とともに紹介できることはおそらく世界初であることを喜びたい。

 ギター収集も一段落していた2017年5月某日,普段余り見ないようにしているヤフオクの「ギター本体」コーナーに出品されているのを発見。出品者は「モモセ製」であることをアピールしてはいるが,「山岸潤史モデル」であるとは一言も言っていない。ファーストオーナーではないのだろう。画像では特徴あるパープルの色合いはほとんど褪色し,アッシュの木目がナチュラル化しているように見えたが,これはまごうことなき「R-158 JY」と判断,落札。競争者なし。G万しなかったので,私的にはお買い得。

 手にしてみると,軽いスワンプアッシュ使用のため,重量約3200g。生音が大きく気持ちよい。ハードテイルのため通常のストラトよりアタック音が強調されるが,サスティン自体も十分に確保されている。弦ピッチは通常より狭く,慣れるとフィンガリングしやすい。ピックアップは品番不明だがLEVINSONロゴ入りオリジナル。クランチ時にブルージーなサウンドが前に出てくる感じ。

 入手時はメタルノブだったがオリジナルに近いものに交換。あとコンデンサがオレンジドロップだが,これがオリジナルかは不明。
BLADE R-158JY-2手持ちの資料を精査してみた。

○カタログ(1994年頃と記憶)には以下の記述。

日本のBLUESシーン屈指のギタリスト山岸 潤史氏とBLADEの共同プロデュースにより生まれたR-158 JY
厳選されたスワンプアッシュボディー,パーフェロフィンガーボード,ソフトニッケルハードウェア,アームレスブリッジ,ヴァイオレットオイルフィニッシュと細部までこだわり,求めたのは究極の鳴り。
R-158 JY  \158,000  V・OIL


○ギターマガジン1994年10月号ワナタベ楽器広告(表記ママ)

山岸潤氏オーダーMODEL!ネックは'63STネックより若干太め,新開発PU,Body材はもちろんSwamp Ash。ノントレです。

○ギターマガジン1994年12月号山岸潤史氏「SMOKIN' HOLE」発売時インタビューより

(ギターは何を使ったんですか?)ギターはブレードのカスタム・モデル。俺は,ずっと61年のアームレスのストラトを使ってて,それが俺の一番好きなギターだったんだ。で,これに近付けて作ってもらったのが,これなんや。(ブレードのギターも,弦は裏通しなんですね?)そう。これは,サスティンが少ないギターなの。テレキャスターって,サスティンが少ないじゃない。俺はそういうギターが好きなのね。(そうなんですか?アルバムで聴けるギターの音は,すごく伸びのある音ですよね?)だから,それはこっち(チョーキングする)で伸ばすんや。伸びないギターを使って指で伸ばす(笑)。伸びるギターを使って,ちょっと弾いただけで伸びても,なんか頼りないやんか。ある程度テンションの強い弦を張って,指で伸ばすのが気持ちいいんや。

 総合するならば,「1994年後半,ハードテイル好きな山岸氏が自分好みの仕様で作らせたストラトタイプ」ということか。サスティンは指で作る,というのがいかにも,というか流石というか。私自身は本器にサスティン不足は感じないのだが。カタログにあった「求めたのは究極の鳴り」というフレーズにヤラれ,自分のオリジナルストラトはハードテイルにしたのであった。なお,意図的と思われるが,弦間ピッチはおそらく10.5mmであり,私の他のストラトタイプと比べると随分タッチが異なる。

 ただ以上の資料を見てもよくわからないことはある。
・ソフトニッケルハードウェアとは?確かに金属パーツはニッケルメッキで渋いのだが。これは何を狙った?(ルックス以外に意味があるのか)
・新開発PUとは?他のブレードのPUとはどう違っていたのか。
・資料上で見られた山岸氏本人のモデルはシュパーゼルのペグ,指板は漆黒のエボニーに見える。なぜ仕様を変えて発売したのか?(おそらくコストダウンだとは思う)

 1994年のリリース以後,20年以上の時を経てコレクションの一員となったこのギター。山岸氏本人の使用期間は短かったモデルなのだが,ナチュラル化したその木目は近くで見るとかなりのインパクトがある。そのスジのセッションなどあれば是非現場でも試してみたい。

 最後に,出品者様の画像を紹介しておきます(この時はメタルノブ)。
BLADE R-158JY-3 BLADE R-158JY-4
BLADE R-158JY-5 BLADE R-158JY-6

(追記)弦交換の際,ピックガードを外して撮影。ピックガードに覆われたボディ部分は,オリジナルのパープルカラーがはっきり残っている。また,ポットはCTSの250K,Aカーブだがこれがオリジナルかどうかは不明。
(2018/1/13)

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